抽象のハシゴとは、アメリカの言語学者サミュエル・I・ハヤカワが『思考と行動における言語』というの著書の中で、「抽象のハシゴ」という概念を提唱しました。

交渉事,原稿作成、マーケティング、クリエイティブ、日常のコミュニケーションに至るまで、ほとんどがこの考え方に基づいて我々は思考を重ねていると言われています。

「抽象のハシゴ」を使って、視野を変える

ここでは、『レンガを積む』という事例を追いながら、〝「抽象のハシゴ」を使って、視点を変える〟ことについて解説します。

まず、『レンガを積む』というこの言葉は、その作業そのものを具体的に表現している言葉ですよね。

ここで、作業をしているある人たちに「あなたたちは何をしているのですか?」と尋ねました。
どんな言葉が返ってきたでしょうか?

「私たちは、今レンガを積んでます。」でしょうか?
「私たちは、今壁を作っています」と答えるかもしれません。

、、、間違いではありませんよね。

これは、同じ「レンガを積む」という言葉でも、捉え方によって解釈に違いが生じるという一例です。目の前の具体的な作業に対してではなく、1段階上に抽象化して捉えたことで、「(レンガを積んで)壁を作っている」と答えたわけです。レンガを積む先にあるものを見て答えたとも言えますね。

別の作業をしているある人たちに、同じように
「あなたたちは何をしているのですか?」と尋ねると、どんな言葉が返ってきたでしょうか?

「私たちは、壁を作っています」でしょうか?
「私たちは、教会を建てています」と答える人がいるかもしれません。


もうお分かりですよね。

「壁を作っている」ことより、さらに1段階抽象化して捉えたと言えます。壁を作っている先にあるものを捉えれているわけです。

「抽象のハシゴ」から見える景色は、そのハシゴの高さによって異なるように、視点の高さを変えれば、視野が抽象化され、物事を広く捉えることができることを、『抽象のハシゴ』は、わかりやすく説明してくれているわけです。

「抽象のハシゴ」の効果的な使い方

ここでは、「抽象のハシゴ」をいつどんな時に、どのように活用すると効果的なのかを解説します。

新しい工夫を生み出したいとき

「今まで、これでやってきたから」とか、「そう教えられたから」など、作業レベルでしか物事を捉えられなくなってしまうと、思考の抽象度も下がり、新しい工夫が生まれなくなります。

そんな時は、『抽象のハシゴ』を上って考えます。

「ココには、どのような意味や目的があるのか?」

抽象度が上がり、目的を明確に捉えることで、「だとしたら、こんなことやあんなこともできるのでは?」と新しい気づきが生み出すきっかくとなります。

具体的な手段や行動を決めていきたいとき

目的レベルやさらにその上の意義レベルからでしか物事を捉えられなくなると、末端が見えません。未来ばかり見て、現実を直視できていない時がそうです。仕事が捗らない状態です。

そんな時は、『抽象のハシゴ』を下りて考えます。

「ココに行くためには、いつどこで誰に何をどのようにしたらいいのか?」

ブレークダウン(細分化)して思考できるようになり、今までフワッとしか見えなかったものを行動レベルに落とすことが可能となります。

上から下を見下ろしても、ぼやっとしか見えませんよね。

「抽象のハシゴ」の頂点から見える景色とは

最後に、『抽象のハシゴ』の頂点から見える景色について、解説します。

冒頭でおはなしした『レンガを積む』という事例で考えてみましょう。

「あなたたちは今何をしているのですか?」という質問に対して、、、

作業をしている別の人たちは、レンガを積みながら、、、
「みんなが幸せに過ごせる大聖堂を作っています。」と答えました。

さて、この一連のおはなしの中で、最もモチベーションが高まったのはどんな答えの時ですか?

  • 「私は、今、レンガを積んでいます。」
  • 「私は、今、壁を積んでいます。」
  • 「私は、今、協会を作っています。」
  • 「みんなが幸せに過ごせる大聖堂を作っています。」

「みんなが幸せに過ごせる大聖堂を作っています。」という思考レベルは、目標設定でいう『意義(つまり意味の上位レベル)』レベルに当たります。ロマンチックですよね。

『意義(つまり意味の上位レベル)』が明確な方がモチベーションが高まるのは、言うまでもありません。「だったら、もっと大聖堂らしい見栄えにするためにこんな積み方をしよう」など創意工夫も期待できるはずです。

このように『抽象のハシゴ』を徹底的に上って考えることは、高次元のレベルで物事を捉えると同時に、自分自身もその高次元に関わっている自負心が持てるため、高いモチベーションにつながります。

まとめ

『抽象のハシゴ』という概念は、物事を様々な抽象レベルで捉える思考技術で、パフォーマンスを高めることができるという思考技術です。

何かに煮詰まった時は、『抽象のハシゴ』を登ったり下ったりしながら、言語化レベルまで落とし込でみましょう。きっと最適な答えを導いてくれます。