私のチームには、「主体性」を持って練習をする選手とそうでない選手が結構います。選手間でのモチベーションに差をすごく感じるんですが、主体性がない選手を上手に伸ばす方法を教えてください。

これは、私が頂く相談の中でとても多いケースです。

ここでは、「主体性」を上手に伸ばす方法を解説しています。

まずはそもそも論から紐解いていきましょう。
そもそも、「主体性」とはなんでしょうか?

「主体性」の意味

「主体性」とは、

自分の意志・判断によって、みずから責任をもって行動する態度や性質。 「 -をもって行動する」

と三省堂 大辞林 第三版にあります。

つまり、「主体性」とは、
何をやるかは決まっていない状況でも、自分で考えて、判断し、行動するということになる。

ポイントは、責任を自らが持っているということです。

それでは、「主体的な人」とは、
目的を明確にし、目的を果たすためには何をすべきかを自分で考え、リスクを承知で行動する人と言えますね。

では、この概念に基づいて、「主体性」を持って行動をする選手が、実はどんな思考が働いて行動しているのかを考えてみましょう。

主体的な人の思考

「主体的な人」が行動をしようとすると、まず「行動をすることの目的」を考えます。
そして、その目的が「自分の将来など明確に自分とつながっている」と定義づけられると、どんな時間どんな場所でも実現しようと自分なりに考えて行動するようになります。

「サッカーを一所懸命今やることが、将来自分のサッカー選手の夢につながる」と明確に紐付けられると、親やコーチに言われなくても、自分から練習メニューを考えてどんどん行動をしていくようになります。

子どもの教育現場でも然りです。主体的に勉強に取り組む選手には同じ思考が働いています。

「主体的な人」は、勉強をすることの目的が「その後の将来につながること」を、明確に定義づけられています。だから、「主体的な人」は、宿題以外でも気になることを調べたり、解き方を工夫しようと方法も含めて考えて実行するようになります。

周りに勉強をする習慣がなくても、主体的な人にとっては、ブレずに勉強を重ねていきます。

このように「主体性をもって行動する」ということは、
自らの責任で自分が最も効果的と思う行動をとるということなんですね。

「主体性」「主体的な人」とは

  • 主体性:いかなる状況においても自分で考え、判断し、行動すること
  • 主体的な人:自分で状況を判断して目的を明確にし、自らの責任で最も効果的な行動をとることができる人

 

「主体性」と「自主性」の意味の違い

ここで、チームビルディングをする上で理解しておくポイントが、一つあります。

よく似たようなことばで、「自主性」ということばがありますが、「自主性」と「主体性」は、それぞれ意味が異なります。まずは、「自主性」と「主体性」それぞれが持つ意味、そしてその違いを知ること。実は、それらをうまく使い分けることが、主体性を上手に高める方法につながります。

「自主性」とは

自主性とは、自分の判断で行動する態度。 「 -に欠ける」 「 -を生かす」

と三省堂 大辞林 第三版にあります。

 

他人からの干渉やサポートを受けず、自分からやり始めることですね。
とても、似ていますね。

 

しかし重要な部分がありません。
どの部分かわかりますか?

主体性は、〝みずから責任をもって〟という言葉があります。

しかし、自主性の意味の中には、〝みずから責任をもって〟が入っていません。

もう少し噛み砕いて説明すると、
自主性とは、
明確に定まっている「やるべきこと」を“人に言われる前に率先して自らやる(行動する)こと”なんです。

今まで働いている職場の上司や先輩に「自主的に動け」と言われたことありませんか

このことば、言い換えると、、、
「やれと言われてからやるのでなく、自分でやろうと思ってからやれ」ということですよね。

先ほどの勉強の例で言えば、「自主的な人」は、勉強をすることの本当の目的はまだ自分の中では分からないけど、コーチや親から“勉強しろ”と言われなくても、率先して勉強することはできます。

まさしく、「自主的な人」とは「やるべきことを誰かに言われる前に、自分の意思でやること」ができる人だからです。俗にいう【いい子】です。

「自主性」「自主的な人」とは

  • 自主性:人に言われる前に率先して自らやる(行動する)こと
  • 自主的な人:やるべきことを誰かに言われる前にやることができる人

では、「自主性」と「主体性」の違いをさらに整理していきましょう。

 

「自主性」と「主体性」の違い

「主体性」は、
やるべきことをやるだけにとどまりません。
「今までやってきたことが効果的ではないからやめる」と判断することも主体性の行動の一つです。

「自主性」は、
やるべきことを、どうやって人に言われる前にやるを最優先に考え、行動していきます。

つまり、自主性を上げることに重きをおいた選手育成は、自分で物事を考える思考の習慣はつきません。むしろ、反射的に行動をしてしまう傾向がでてきます。

つまりこの2つの「主体性」と「自主性」の大きな意味の違いは、

「自分の頭で、自分軸で物事を考えるか、考えないか」にあるんです。

「自主性」のある行動は、やるべきことが明確なので考える必要がないのに対し、「主体性」のある行動は、自分がやりたいことなので、自分の頭の中で考える必要があります。さらに自分が好んでやりたいと思ってやる行動なので、自然とその行動と結果にも責任を負います。

日本の会社や家庭では、「自主性」を重んじる教育手法に色こく反映されています。

企業や家庭内では、まず自分から挨拶をするように教育されます。
職場では「仕事は待たず、自分から探せ」
親の口癖は、「学校で出された宿題を、自分からやりなさい」
などなど、、、

ここに責任を負う思考は働きませんよね。

これは、ただやるべきことを淡々とやるロボット教育なんです。
いい子ちゃん教育なんです。
思い描いた通りに淡々と働いてくれる奴隷づくりといっても過言ではありません。

このような日本の企業や家庭教育にある自主性偏重の教育では、
「主体性」は身に付きません。

主体性は〝責任を自分で持つ〟ことからはじまります。

この “責任を負わせる”ということをしてこなかった日本の教育体質が、「主体性」を身に付けることを阻む大きな原因となっていたといっても、過言ではありませんよね。

少し話が逸れましたが、、、

「主体性」と「自主性」の違いについておさらいしましょう。

「主体性」と「自主性」の違いとは

  • 主体性のある行動は自分の頭で考える必要があるが、
    自主性のある行動は自分の頭で考える必要はない
  • 主体性のある行動には行動結果の責任を伴う

「主体性」を上手に伸ばす方法

最後に、今回のテーマである「主体性」を上手に伸ばす方法について解説します。

(1)その選手が、どのレベルにいるかを観察し、判断する。

○○に対して、、、

  • 自主性がない。
  • 自主性はあるけど、主体性がない。
  • 自主性もあるし、主体性もある。

(2)自主性がない選手は、選手のレベルにあった明確な指示命令から

「主体性」を引き出すための最初の段階は、意外かもしれませんが、実は「指示・命令」が有効です。「今はコレとコレをやってほしい」と都度、明確にやるべきことを伝えることです。

また、闇雲に「まずは自分の頭で考えなさい!」では、何をどう考えたらいいか分からないものです。逆に自分は考える力がないんだと自信喪失になるばかり、、、

「自主性」がない選手は、何をいつどのようにしたらいいかも分からないことが多いので、明確に丁寧に教えましょう。あの子は出来るのに、、、という比較は絶対にNGです。人には成長ポイントも違いますし、今できなかった子があるきっかけで、グーンと成長をしたという話、よく聞きますよね。

要求に応えられるようになったら、ステップアップ。

つぎに「今日の練習の中で、コレとコレをやってもらえるかな?」とお願いしてみましょう。

ここでは、やるべきことは明確に指示していますが、時間的な自由を与えるところがポイントです。それに対して、選手がどう実践するかをしっかり観察していきましょう。

それを繰り返していくと、自分なりにこのタイミングやってみようとか、自分の意思で行動するようになります。自分の意思で行動した時は、見逃さずに思い切り褒めてくださいね。大きな自信になりますし、自分の意思で動く楽しさを感じ、もっとやってみたいというモチベーションを引き出せます。

(3)主体性を伸ばすには、自主性を潰さないことから

自主性を伸ばすあまりに、、、
「こうやりなさい!」「何やってるんだ。それは駄目でしょ!」「なんで、それをするの!」など、熱心に教育指導は素晴らしいのですが、一所懸命やっている選手の自主性を潰しては、元も子もありませんよね。怒号が飛び交うこのような自主性偏重型の教育は、今もまだ多いのが実情です。

このように自主的な行動を否定され続けると、本来のゴールである、「目的を果たすために主体的に物事を考えて行動する人」は愚か、行動するそ気もなくなってしまいます。

(4)主体性がない選手は、「考えさせて、自分で動く」流れを作る

仮に選手が失敗したとしても、「違う!何をやってるんだ!」と感情的に叱責するのではなく、何がどのように違うのか、それによってどんなマイナスが生まれるのかを丁寧に明確に伝え、相手が自主的に動ける範囲を広げてあげることがポイントです。

思いき行動を任せましょう。任された選手自身は、言わずとも責任を持って行動します。たとえ失敗したとしても、一緒に責任を分かち合い、一緒に考えていきましょう。

まとめ

 「主体性」がある選手とない選手を、上手に伸ばす方法

  1. 選手の状態を見極める
  2. 今の選手のレベルにあった最適な指導をする

選手の状態を見極めるためには、「主体性」「自主性」の意味と特徴を理解することでした。その上で、最適な指導をすることが、最適な結果をもたらせます。

「自主性」の上手な伸ばし方法

  1. やるべきことを明確にする
  2. やるべきことをいくつか提示した上で、自分で考えさせて動ける流れをつくる

「主体性」の上手な伸ばし方法

  1. 選手の自主的な行動を潰さないようにする
  2. 責任を持って自主的に自由に動けるよう、一連の行動を任せ認める

 

今日も素晴らしいチームビルディングを!
強いチームを作りましょう!