チームづくりにおいて目標設定は、行動目標から成果目標へ、そして意義目標と、時代と共に重視される目標が変化してきたと言われています。

今回は、これらの目標設定を時代背景とともに解説します。時代背景とともに理解すると、目標がいかに環境と密接に関係しているかわかると思います。

作業が求められた時代

まずは、行動目標設定の時代です。

実は、行動目標設定というのは、「振り返り評価」という形で、ほとんどの日本人が小さい頃にすでに経験しています。小学校の通信簿です。

  • 「返事やアイサツをはっきりする」
  • 「身の回りをきちんとかたづける」
  • 「友だちと仲良くする」、、、

など、行動目標が全員共通で設定されていましたよね。

そして、それに対して、学期ごとに振り返って、◯や△で評価をつけいていたと思います。そこに、私たちは、子どもながらに一喜一憂したり、親からの評価ももらっていました。

多くの企業で1年に1度、半年に1度で、社員に対して実施される人事評価や目標設定と振り返りも同様です。

これは、高度経済成長期の日本の時代背景が大きく起因しています。

「安くて良いものを速くつくって届ける」というのが、当時の変わらぬ勝ちパターンとしてトレンドでした。

そのトレンドに基づき、ほとんどの企業が求めたチームづくりが、「予め定められた行動をしっかりと遂行するチーム」だったのです。「あれしろ!これしろ!」がまかり通った時代ですね。

しかし、ビジネスの世界の環境変化は、どんどん進化を重ねていきます。

一度成功した勝ちパターンもその環境変化とともにすぐに陳腐化し、チームやメンバーの取るべき行動も一刻一刻と変わってくる環境の変化への適応力が問われる時代となりました。

裏を返すと、行動目標に基づくだけのチームは、パフォーマンスは停滞し、チームは機能不全となってしまったわけですね。

数字が求められた時代

次に時代の流れとともにきたのが、成果目標設定の時代です。

日本企業は、不況を克服するための対策として、MBOという新たなチームマネジメント手法を導入します。1980年代~90年代にかけて急増したそうです。

MBOとは、1954年に、アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが著書『現代の経営』の中で提唱した、組織のマネジメント手法「Management by Objectives」のことで、日本語で「目標管理」と言われています。

アメリカの心理学者・経営学者ダグラス・マクレガーは、著書「企業の人間的側面」の中で、「人間は本来仕事が好きで、自らの目標のために進んで問題解決に当たろうとする」という心理的影響を活かし、一人ひとりの自主性を活用したメンバー管理が生産性向上・企業全体の業績アップに効果的と述べていますが、そこにドラッガーが、改めて自身の著書の中で、「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを、自己管理によるマネジメントに置き換えることにある」と提唱したわけです。

つまり、経営者から一方的にコントロールされるのではなく、自分の目標を持つことが重要だと説いているのです。

MBOでは、チームごとの成果目標を定量的に設定し、各メンバーに落とし込んでいきます。そしてその達成度合いを評価基準にしてマネジメントしていきます。

これにより、成果を出すためにどんな行動を取るかとういう思考が、個人の自己責任による部分が大きくなったため、メンバー自らが考える機会となり、そんなビジネス環境の変化に、対応できるチームが生まれてきました。

反面、成果目標に重点を置くあまり、組織の活性化や従業員のモチベーションアップが目的になってしまうことが多く、メンバー自身の努力も評価のためのものになり、やがて、チーム全体の目的を失い、パフォーマンスアップは停滞し、機能不全に陥るケースが増えてきました。

まさに、「馬の鼻先に人参をぶら下げる」とはよく例えられたことばです。

結局は、行動目標も成果目標も、目の前の人参と同じで、「作業」や「数字」をただ追う思考を生み出すわけです。

作業の奴隷、マニュアル人間、数字の奴隷、、、。

この時代を抽揶揄することばは、たくさんありますね。

意義を求められる時代へ

そして、現代の目標設定のトレンドが意義目標です。

GoogleやFacebookをはじめとした、シリコンバレーの大企業が積極的に取り入れていることから注目を集めているOKRという目標の設定・管理方法です。Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称で、米・インテル社のアンディ・グローブが生み出したと言われています。

このOKRは、目標をロジカルに設定することができるので、メンバーの納得感が増し、目標へ集中することができたり、エンゲージメント向上が期待できます。

OKRは、「Key Results」(成果目標)を設定すると同時に、その先にある「Objectives」(実現すべき目的や意義)まで含めて目標設定していきます。さらに、「Objectives」(実現すべき目的や意義)すなわち意義目標が最重要視されており、「Objectives」(実現すべき目的や意義)の実現に効果的だと判断できれば、「Key Results」(成果目標)を変更することも可能という柔軟な行動管理手法が大きな特徴です。

これが、この意義目標の機能しているポイントで、変化が激しい環境においては、チーム自らが意義や目的に立ち返り、時に成果や目標の観点や水準を即座で見直し、柔軟に変化変容できるチームに勝機があるからなんですね。

まとめ

チームに行動目標設定しかなければ、時にメンバーは、「作業」の奴隷となり、成果目標しかなければ、「数字」の奴隷なります。しかし、多くのチームが意義目標の重要性とその効果を十分に知りません。

意義を見出すことは、メンバ自身が進むべき道を明確に示すことになります。

「何をやるか?」ではなく、「何故やるか?」

その問いの先に、自分の意思の先にある行動が見つかります。

理想のチームづくりとは、チームが何のために存在し、どんな影響を与えていきたいかという意義目標を全てのメンバーが意識し、自発的に行動し、成果をあげるチームづくりなのです。